相続登記は、原則として遺産分割が完了し、遺産の取得者が確定している必要があるため、ひとりでも行方不明がいると登記を進めることはできません。
また、令和6年4月からは相続登記の申請が義務化されており、行方不明の相続人がいる場合でも、対応を先延ばしにすることはできません。
本記事では、行方不明の相続人がいる場合に取るべき対処法について、わかりやすく解説します。
行方不明の相続人がいる場合の対処法
行方不明の相続人がいる場合の対処法は、以下の3つです。
1. 行方不明者の所在を自力で特定する
2. 不在者財産管理人を選出する
3. 失踪宣告を利用する
それぞれ解説します。
行方不明者の所在を自力で特定する
まずは、戸籍や住民票を取得する、知っている電話番号へかける、以前の住所へ手紙を送るなどして、行方不明になっている相続人の所在を自力で特定するよう試みます。
自力での捜索は費用をかけずに進めることができるのがメリットです。
また、発見できれば直接協議に参加してもらい、円満に相続登記を進めることも可能になります。
注意点
住所や電話番号が変わっている場合、自力で発見するまでに時間がかかることがあります。
また、本人と思われる人物を見つけただけでは不十分で、「そのひとが相続人本人である」ことを法的に証明できなければ協議・登記に進めない点にも注意が必要です。
不在者財産管理人を選出する
手を尽くしても相続人の所在が特定できない場合、家庭裁判所に申し立てれば「不在者財産管理人」を選任してもらうことが可能です。
不在者財産管理人が行方不明者の代理人として遺産分割協議に加わるため、他の相続人との合意に基づいた相続登記を進めることが可能となります。
注意点
選任には申立書類の準備や家庭裁判所での審査が必要で、手続き完了までに1か月〜数か月程度かかることもあります。
また、手続きや代理人への報酬など、あわせて数万〜数十万円の費用が発生する場合もあるので、あらかじめ確認しておくことが大切です。
失踪宣告を利用する
相続登記を不在者財産管理人の代理によって完了したあとも、長期間にわたり行方が分からない状態が続く場合、失踪宣告を申し立てることができます。
失踪宣告は、行方不明者を法的に「死亡したもの」とみなす手続きです。
申し立てが受理されると、「不在者財産管理人の管理状態が終了」し、「第二次相続(不在者の相続)」が始まります。
注意点
失踪宣告の申し立てには条件があり、通常失踪で「7年以上」、災害や事故などによる特別失踪では「1年以上」生死が明らかでない期間があることが必須です。
なお、起算点は「その人が生死不明の状態であることを知ったとき」で、警察に行方不明届を提出したタイミングなどが該当します。
まとめ
相続人が行方不明の場合でも、段階的に手続きを踏めば、相続登記を進めることは可能です。
「何から始めればよいか分からない」「裁判所への申し立てが不安」という方は、司法書士への相談を検討してみてください。